2022年8月24日、京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長(90)が老衰の為お亡くなりになりました。
鹿児島大学を卒業後、京都のガラスメーカーに入社し、1959年27歳の時に独立。
仲間と共に資本金300万円で京都セラミック(現:京セラ)を設立。
1984年には第二電電(現:KDDI)を設立。
2010年には経営破綻したJAL(日本航空株式会社)の会長に就任し、再建の道筋をつくりました。
この”JAL再生タスクフォース”は半沢直樹でも取り上げられた題材なので見たことある人もいると思いますが、9592億円の債務超過をし、立て直しを任されたのが稲盛氏というわけです。
このJALの再建を図っている時、伊丹空港のカウンター勤務の若い女性社員が
月2,000円のコスト削減案を発表しました。
周囲は金額の少なさに嘲笑い困惑しましたが、
稲盛氏は
と大いに褒め、メールで全社員に伝えたというエピソードがあります。
こういう小さいことの積み重ねが大きな結果となって返ってくるという姿勢は
僕自身、何冊も本を読み学ばさせていただきました。
そんな稲盛和夫氏の本
稲盛和夫 魂の言葉108
を読んで僕なりに感じたことを書いていきます。
稲盛和夫 魂の言葉108
よく生きるために、よく働くこと
この世に生まれてきた理由は、
「わずかなりとも美しく崇高な魂を持って死んでいくため」
と述べています。
魂をより崇高なものへと高めること。すなわち心を磨くということはよほどの修行が必要です。
俗世に生きる私たちにとって修行とはまさしく「働く」ということ。
心を磨き、魂を高めることが、よく生きることであるならば、その為には
「よく働くこと」が最も大切と言えるのではないでしょうか。
最近はいかにして楽に稼ぐか?を考えている若者が多いです。
社会人とは、社会に必要とされている人が対価としてお金を頂けるという事を忘れてはいけません。
仕事は奉仕活動です。誰かのために知恵を使い、行動することが本来の仕事としての役割です。
本来できない事も「できます」と返事する
人間はその思考を実現することができる
京セラは創業の頃より、他社が「できない」と断った仕事も進んで受注してきました。
他社ができない事をやらないと会社は生き残れないと確信していたからです。
日々の仕事の中で相手先からかなり困難な依頼や無茶な依頼を受ける事もあるでしょう。
その時に「できません」と言ってしまえばそれまでです。
相手との関係もそれで終わりです。
ビジネスや取引とは自分でできないものをお金を払ってやってもらう事に意味があります。
断るのは簡単ですが、それを繰り返していては仕事のできない人間と判断され、経営は成り立たなくなるのです。
「できます」「やれます」と応じたのならば、今度は必ず結果を出さなければ次の仕事は来なくなります。
「できます」という嘘をどうにかして真実にしなければいけません。
徹底的に努力してやり続ける事が大事になります。
こうして「できる」という結果を出し、信頼を勝ち取っていくのが仕事なのです。
自ら燃え上がる自燃性の人になれ
仕事をやり遂げるには大きなエネルギーが必要です。
このエネルギーとは自分自身を燃え上がらせてくれるようなやる気の種火です。
物質はそもそも「可燃性」「不燃性」「自燃性」の3つに分かれます。
「可燃性」・・・火を近づけると燃えるもの
「不燃性」・・・火を近づけても燃えないもの
「自燃性」・・・自分から燃え上がるもの
この3つのタイプは人間にとっても同じです。
何かを成し遂げたければ「自燃性」タイプの人間にならなければいけません。
この「自燃性」タイプの人は、一言で言えば
誰に言われなくても自分から進んで仕事をするような人です。
「自燃性」タイプの人は自ら燃えることで「可燃性」の人を巻き込んで燃え上がります。
では、どうしたら「自燃性」タイプになれるのか?
答えは極めてシンプル・・・仕事を好きになることだけです。
もし、自分に才能が与えられているなら、それは従業員のため、お客様のため、
そして社会のために使わなくてはならない
好きで燃えているからこそ、エネルギーを周囲にも分け与え、仕事をやり遂げられるのです。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
継続と反復は違う
継続は力なりと言いますが、ただ同じことを繰り返していては何の成長もありません。
継続していく中で蟻の一歩でも前進していかなければ、それは継続ではなく反復になるのです。
毎日、何の反省もなくただ同じことをやって過ごすのは時間の無駄です。
昨日より今日、今日より明日、明日より明後日と、わずかでも改良点や改善点を見つけ出し、付け加えていく・・・
創意工夫やより良くしようという精神が反復とは大いに異なるところです。
才子、才に倒れる
”自分の才能を過信して、地道な努力を怠る人はいずれ倒れる”という意味ですが、才能など根拠のないものを信じているから上手くいかないことに気付いた方が良いでしょう。
よくこういう言葉を聞きますが、本人は真面目に努力しているに過ぎないのです。
才能があるという言葉は周りが認めるところで、自分が決めるものではありません。
「イチローは才能がある」とみんな言いますが、本人は
と言います。
才能など根拠のないものにしがみついて努力を怠ってはいけません。
才能があるかないかは、周りが認めるかどうかです。
人生を貫く原理原則
人として正しいかどうか
稲盛氏が27歳で京セラを起こした時、それまでは技術者であったものの、会社経営に関しては知識も経験もなく、全くの素人でした。
従業員の生活、ひいてはその家族の責任を全て背負い、様々な問題に直面し、とんでもないことを始めてしまったと悩む日々でした。
「経営者は孤独だ」と言われますが、これはやったことのない人には理解できない苦しみです。
長い応能の末、稲盛氏が導き出した答えは極めてシンプルな原理原則でした。
それは、
人間として何が正しいのか
- 嘘をつかない
- 正直でいる
- 欲張らない
- 人に迷惑をかけない
- 人に親切でいる
- 私利私欲で動かない
人として当たり前のルールに照らし合わせて経営をする。
原理原則がシンプルだからこそ、迷った時、困った時、立ち返る原点となりうるのです。
リーダーの資質
使命感と徳を持つリーダー
リーダーの行為、態度、姿勢は、それが善であれ悪であれ、集団全体に野火のように拡散することを胸に刻むべきである
リーダーは自己犠牲を払う勇気を持っていなければならない
リーダーになる条件は使命を持って働くことだ
これは稲盛氏がリーダーに立つ人に常に言っていた言葉です。
例えあなたがリーダーなんて面倒臭くてやりたくないと思っても、あなたの為に犠牲を払ってくれるリーダーは存在しているのです。
それを理解せずにラクに働こうと思っている事がおこがましいのです。
リーダーに立つあなた・・・あなたの使命は何ですか?
想いを背中で見せないと人は去っていくものです。
利他の精神が不可能を可能にする
稲盛氏が日本航空の再建を任された時、3つの大義があったと述べています。
- 日本経済への影響
- 日本航空に残された社員の雇用を守る
- 国民の利便性の確保
こうした大義があったからこそ、稲盛氏は未経験の航空業界に飛び込み、不可能と言われた経営再建を成し遂げたのです。
自分の利益を追求する利己の精神は捨て、利他の精神、人々の為に何とかしなくてはならないという使命感が不可能を可能にしたのです。
リーダーに必要な”使命感を持つ”という要件に加え、稲盛氏は
- 目標を明確に描き、実現する
- 新しいことに挑戦する
- 信頼と尊敬を集める
- 思いやりの心を持つ
という4つを加え、リーダーを育てました。
他人の為に動ける人が、他人から力を貸してもらえる絶対条件なのです。
私自身が「人間として何が正しいのか」と問い、ど真剣に人生を生き、
会社を経営してきた。この国が「失われた20年」と言われ、将来の不安を持ちながら生き、若年層の自殺者やニートが増加傾向にあるなか、私の経験や人生、仕事を通して考えてきたことが、生きることに迷う若い人の背中を押す力になるならと出版をお受けすることにした。
と書いてあります。
言葉には魂が宿ると言われていますが、悩んだ時、立ち止まった時、成長したい時などぜひ読んでみてもらいたい本です。